進行性網膜萎縮症(Progressive Retinal Atrophy)について

多くの犬種には、その犬種の目的を果すための機能に障害を及ぼす、重大な遺伝病が発見されています。古くから、それぞれの犬種の愛好者は目に見えない原因を排除すべく、詳細な血統や病状の記録を元に、繁殖に際してできる限りの努力をしてきました。 しかし現代になって、それらの病気や異常のいくつかは遺伝子によるものという研究が発達し、検査や対処法などが開発されています。

進行性網膜萎縮症は、頭文字からPRAとよばれ、世界中のアイリッシュセターファンに恐れられている病気です。遺伝性で、回復することのない盲目となる病気で、子犬の時代にはほとんど症状の出ないこともあり、成長に従って視力が落ちるため、犬自身だけでなく、オーナーの悲しみも非常に大きなものです。
アイリッシュセター以外にPRA発症がある犬種には、コリー、ノージェニアン・エルクハウンド、ダックスフンド、ミニチュアシュナウツアー、ミニチュアおよびトイ・プードル、ラブラドールリトリバー、サモエド、シベリアンハスキー、イングリッシュおよびアメリカン・コッカースパニエルなどがあげられてます。
なかでもアイリッシュセターは20世紀の初頭からこの病気に悩まされてきました。この病気は英国やスカンディナビアで確認されたと言われ、アイリッシュセターは多くの犬種の中では最も早い時期に遺伝子検査の方法が確立された犬種です。

症状は、子犬は生後6週間ころに夜盲症の症状から始まります。暗くなると物にぶつかったり、足を踏み外すなどの異常が起きます。 成長に従って視力の低下が激しくなりますので、猟に使われる場合はその異変が顕著ですが、通常の家庭では、それまで追いかけていたボールを追えなくなったり、活発な行動をとれず、座り込んで頭を振るなどの様子を見せます。
1〜2才までには、この因子を持ち【アフェクテッド】の段階の犬のほとんどは完全に失明します。


クラブの方針
アイリッシュセターを愛し、より良い子孫を次代に残すことを目的としている私たちのクラブとしては、このような恐ろしい遺伝子の継承を排除したいと考えています。
特に活動的でパワーにあふれたこの犬種が、わずか1〜2歳で盲目となってしまう悲惨さは、なんとしても避けるべきであると考えます。
すでに日本にもPRAの因子を持った犬が繁殖されていることから、この遺伝子の広がりを早急に阻止しなくてはなりません。
いちどでも繁殖を考える犬については、繁殖者が安心して子犬の誕生を待ち、成長を楽しめるように、また新しくオーナーとなった人々や犬が、悲しい状況に追い込まれないためにも、PRAの積極的な排除を考えています。
海外諸国のクラブでは、クラブのショー会場などで獣医師による血液採取を行い検査の推進を図り、ブリーダーの多くはPRA検査には細心の注意を払っています。また、結果によっては該当犬の交配を停止し、各クラブで検査記録を管理しています。
私たちのクラブでも、2001年11月の創立展を第一回とし、今後も機会を得るごとに集団検査を実施したいと考えています。



検査法
PRAは発症しないかぎり、外見からはその因子を持っているかどうかの判断は不可能です。そして、発症してしまうと治療の方法はありませんが、それ以前に防ぐことはできます。
遺伝子検査をベースとしてこの因子を持っているかどうかを知ることにより、慎重な繁殖の計画を立てることができます。この検査は、現段階では日本では受けることができませんが、アメリカ、オーストラリア、英国、オランダなど先進諸国では各大学や研究所などで実施され、繁殖者のモラルとして率先して受検されています。

日本から依頼するのは、生体検疫との関係でアメリカがもっとも迅速に検体を送ることができるため、アイリッシュセタークラブ オブ アメリカで依頼しているニューヨークのOPTIGENに依頼しています。 また、暑い季節の輸送は検体の変化も発生するため、現段階では日本もニューヨークも気温の安定した季節を選んでいます。

検査は、わずか3〜5ccの血液を採りその日のうちにアメリカへ発送するだけで、あとは数週間以内に知らされる結果を待つだけの簡単なものです。採血は獣医師に依頼し所定の容器に詰めて発送します。

この検査によって次の3段階の結果を得られます。

1 N=クリアー(ノーマル) 因子を持たない。この犬からはすべての子犬にノーマルな遺伝子のみが送られます。
2 C=キャリアー  遺伝子の組み合わせの片方にこの因子を持っている。
ほとんど発症はしないが、一つの遺伝子にこの変形を持っているので、クリアーとしか繁殖できない。
3 A=アフェクテッド 遺伝子の組み合わせの両方に この因子を持っている。ほとんど発症する。



繁殖の指針

上記の検査結果に基いて、繁殖犬の組み合わせは下記の表のように考えられます。


予想される 親1と2の繁殖結果
親の1(父または母) 親の2(母または父)
Nとの組み合わせ Cとの組み合わせ Aとの組み合わせ
N=ノーマル すべて N 1/2 = N
1/2 = C
すべて C
C=キャリアー 1/2 = N
1/2 = C
1/4 = N
1/2 = C 1/4=A
1/2 = C
1/2 = A
A=アフェクテッド すべて C 1/2 = C
1/2 = A
すべて A

上記 つきの範囲内での繁殖であれば、発症の可能性が低いとされていますが、最適はN同士の繁殖です。これらを調べるには、現段階では 血液を採取しての遺伝子検査以外方法はありません。


さらに詳しく知りたい方は HPをご覧ください
http://www.optigen.com/  アメリカ
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