アイリッシュセターとは こんな犬種です

その昔、すべての犬種の中で最も美しい犬種、と芸術家たちの絶賛を浴びたといわれるアイリッシュセターは、光沢のある印象的なマホガニーレッドの毛色、穏やかな表情とやさしい眼差し、そして落ち着き払った風格の奥に秘められた陽気な愛すべき性質を備えている犬種です。猟犬としての能力も優れていますが、家族の一員として多くの人々に愛されています。

しかし、この犬種は、一般的な『飼いやすい犬種』ではありません。子犬時代から老犬になるまで、本質的な特性はほとんど変わりませんし、大型でエネルギーに溢れ疲れを知らない鳥猟犬種のためです。
スタンダードに描かれているように、『陽気なはしゃぎ易い性格』は本質的な特性であり、暗く用心深い性格は、多くの場合後天的な影響です。この特性は、健全なアイリッシュセターを飼った経験者ならすぐに理解できるほど、年齢に係わらずイタズラ好きで、自我も好奇心も強いため、時としてオーナーを悩ますものの、毎日の犬との生活は新鮮なものとなります。
エネルギッシュなこの犬種にいちばん重要なポイントは、子犬の時期から一生を通して、毎日、十分な運動をさせることです。ただ長い距離を単調に走るのでなく、年令に応じた全力疾走やトロットなど全身の筋肉を存分に働かせます。このために、規則正しい時間と運動する場の確保、そしてなによりもオーナーの覚悟が絶対に必要な条件です。

肉体的にも精神的にも、他の多くの犬種よりも成長のスピードはゆっくりしています。オスはおよそ3才,メスはおよそ2才で精神的に成犬となりますが、良い環境で成長したアイリッシュセターは、何才になっても子犬のころの陽気さやイタズラ好きな性質は、ほとんど失われません。
また、知的レベルは子犬期から日ごとに高まり、4〜5才を迎える頃には、普段の生活にはほとんど何も教える必要のないほどに理解力が高まります。反面、たとえ10才になってもイタズラの度合いが減ることは少なく、むしろ年齢とともに巧妙にもなります。平均的な進歩の度合いとして、教えられたことは忘れませんが、犬自身の興味や好奇心が優先される時期が長いため、覚えが悪いと誤解されるケースも多いのです。
とても賢く、記憶力の優れた犬種であるアイリッシュセターとの生活を楽しむには、同時にオーナーの多大な忍耐力が必要です。無意味な体罰を与えたり、犬をむやみに強制するのでなく、海よりも深い愛情と、山よりも大きな包容力を持たずには、この犬種と共に暮らすことは不可能です。
また、幸せなアイリッシュセターの生活には、家族の一員として室内で共に暮らすことが、情緒的な面や、言葉の理解を高める面でも最も望ましいものです。
犬は自らオーナーを選択できません。犬の一生が、幸せになるか、或いは不幸になるかは、100パーセント、オーナー次第なのです。  


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